LTEモジュールとは?使用するメリットや選び方、大手メーカー4社を紹介
2024.04.05

IoT技術を駆使してさまざまな機器による無線環境を構築するにあたり、役立つのがLTEモジュールです。IoT機器を製造あるいは販売する場合、電波法の理解や技術基準適合認定の取得が必要となりますが、LTEモジュールを使用することにより、これらの対応工程を省略化して無線環境を実現させることができます。
本記事ではLTEモジュールの概要や仕組みに加え、活用するメリットや製品の選び方、具体的なLTEモジュールの製品を紹介します。LTEモジュールについて知りたい方はぜひ参考にしてください。

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目次
LTEモジュールとは

まずは、LTEモジュールの特徴や仕組みから把握していきましょう。
LTEモジュールの特徴
LTEモジュールとは、無線通信規格の1つであるLTE(4G)に対応した組み込み型のモジュールのことを指します。モジュールは、特定の機能を持った部品のこと。つまり、通信を必要とする機器にLTEモジュールを組み込むことで、対象の機器はLTE通信ができるようになります。
LTEは携帯電話やスマートフォン向けに、高速なデータ通信をするために開発された通信規格です。現在もスマートフォンを所持する人の多くがLTE(4G)通信を利用しています。
LTEモジュールの仕組み

LTEモジュールは、機器に組み込むことでインターネットに直接接続できる部品です。Wi-Fiのような他の無線通信規格と異なり、LTE通信には自前でのアクセスポイントを必要としません。そのため、IoT化したい機器にLTEモジュールを組み込めば、機器の動作状況や各種センサーからの情報をインターネット経由で直に送信できます。
例えば外にある機器でアクセスポイントを用意できない場合でも、LTEなら通信可能です。送信された情報や通知をスマートフォンやパソコンなどで受け取り、各機器の稼働状況を管理できます。
LTEモジュールが対応している通信規格の種類と特徴

LTEモジュールは通信規格によっていくつかの種類に分かれています。ここでは主要な3種類を紹介します。
どの規格も通信キャリアのネットワークを利用しているため、利用可能なエリアはスマートフォン(4G)での通信が可能なエリアとほぼ等しく、日本全国で利用しやすい通信規格と言えます。
通信規格 | 通信速度 |
---|---|
LTE | 下り:最大 :1.7Gbps 上り:最大 :131.3Mbps*1 |
LTE-M(Cat.M1) | 下り:最大300kbps*2 上り:最大375kbps |
NB-IoT(Cat.NB1) | 下り:27kbps*3 上り:63kbps |
*1 LTEの通信速度についてはこちらを参照しております。
https://www.docomo.ne.jp/area/premium_4g/
*2 LTE-Mの通信速度についてはこちらを参照しております。
https://www.ntt.com/business/lp/iot/lpwa/spec.html
*3 NB-IoTの通信速度についてはこちらを参照しております。
https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2018/20180426_02/
LTEモジュールを実際に選ぶ前に、目的に適した通信規格の種類や特徴を把握しておきましょう。
LTE
LTEとは、モバイル専用の通信規格の一つで、Long Term Evolution(ロングタームエボリューション)
の頭文字からLTEと呼ばれています。対応エリアが全国規模で非常に広く、高速でつながりやすいのがメリットです。
国際電気通信連合がLTEを4Gと認めたことから、「LTE=4G」として取り扱われ、広く認知されています。
LTEは大きく分けてFDD-LTEとTD-LTEの2種類があります。FDD-LTEは上りと下りの電波を周波数ごとに分けて通信する方式で、携帯電話が始まった時から使われています。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルにて採用されている方式です。
一方、TD-LTEは電波を時間ごとに分けて通信する方式です。1つの周波数を時間ごとに上り通信・下り通信に分けて通信することができ、データ通信の需要が増えた近年に採用が増えました。
LTE-M(Cat.M1)
LTE-Mは、LTEの一部周波数帯域のみを利用する通信規格です。各キャリアでは「LTE-M」、実際の通信規格では「Cat.M1」と呼ばれます。
LTE-Mは、通信速度は、通信事業者で異なりますが、後述するNB-IoTと比べても下り300kbps、上り375kbpsと高速通信を実現できます。
省電力性にも優れており、乾電池で駆動するIoT機器にも組み込むことができます。電源供給の方法が限定されている場合に役立つ規格です。
NB-IoT(Cat.NB1)
NB-IoTはデータ容量の少ない通信を何度もする際に役立つIoT向けの通信規格です。携帯電話のキャリアでは「NB-IoT」と呼ばれ、正式な通信規格では「Cat.NB1」と呼ばれています。
一般的な通信規格では上下の通信速度で下りの方が速いことが多いですが、NB-IoTは逆で上りの方が高速です。また、NB-IoTは、固定されて使用することを想定しており、複数の基地局を跨いで通信することには向いていません。
上記で挙げた他の通信規格に比べると通信速度が遅い、複数の基地局を跨ぐことができないなどの欠点はありますが、省電力性と低コストに特化している通信規格です。
LTEモジュールを使用するメリット

既存のLTEモジュールを機器に組み込む主なメリットとして、技術基準適合認定の申請が不要になる点が挙げられます。
IoT機器によりデータを送受信するにあたっては、電波を使用するため電波法に基づいて手続きが必要です。一部の例外を除き、無線機は原則として技術基準適合認定の取得の手続きをしなければなりません。
しかし、認証済みのLTEモジュールをそのまま機器内に組み込み、無線機とする場合、無線機は電波法の基準を満たしているとみなされ各種手続きが不要になります。国内で製造されているLTEモジュールの多くはすでに技術基準適合認定を取得しています。
具体的にどのような手続きが不要になるのか、例として技術基準適合認定取得の流れを見てみましょう。技術基準適合認定は次のような手順で取得します。
- 必要書類の用意
- ハードウェアとソフトウェアの準備
- 試験サンプルの抽出
- 無線試験の受験
- 技術基準適合証明書の受け取り
全国に16ヶ所ある、総務省の認定する証明機関に書類一式を用意して申請します。証明機関では実際に無線機の電波を試験するため、電波の送受信に必要なハードウェアやソフトウェアが必要です。試験サンプルは製造、販売する機器そのものではなく、試験用のサンプルをメーカーに依頼して取り寄せるなどして用意します。
試験結果が問題なければ合格し技術基準適合認定を取得可能です。取得には約1~2週間かかり、設計資料やサンプルなどを用意する費用もかかります。技術基準適合認定を取得済みのモジュールを使用すれば、これらの手間や時間、費用をすべてかけずに済みます。

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LTEモジュールの選び方
LTEモジュールはさまざまな種類が市販されているため、目的に応じて最適なものを選ぶ必要があります。具体的な選び方を、対応バンドとメーカーの実績の2つの観点から解説します。
対応バンド

バンド | 周波数帯 |
---|---|
バンド1(B1) | 2.0GHz帯 |
バンド3(B3) | 1.7GHz帯 |
バンド8(B8) | 900MHz帯 |
バンド11(B11) | 1.5GHz帯 |
バンド18(B18) | 800MHz帯 |
バンド19(B19) | 800MHz帯 |
バンド21(B21) | 1.5GHz帯 |
バンド26(B26) | 800MHz帯 |
バンド28(B28) | 700MHz帯 |
バンド41(B41) | 2.5GHz帯 |
バンド42(B42) | 3.5GHz帯 |
LTEモジュールを選ぶにあたり確認しておきたいのがバンドです。バンドとは、LTEで使用できる周波数帯のことです。LTEでは700MHz~3.5GHz帯まで対応しており、周波数が高いほど通信速度も高速になります。
バンド8・18・19・26・28は「プラチナバンド」と呼ばれる700~900MHzの周波数帯です。高速でつながりやすいだけでなく、障害物に強く広範囲な通信ができます。そのため、全国的にIoT機器を設置して運用したい場合や、電波の安定しにくい場所に設置する場合にも役立ちます。
バンドは複数存在しますが、すべてに対応するキャリアはありません。どのLTEモジュールを選ぶかで対応キャリアが変化します。使用エリアの電波の入りやすさや対応範囲なども考慮して使用するキャリアを選び、そこから対応するバンドを選ぶ必要があります。
メーカーの実績
LTEモジュールは実績のあるメーカーの製品を選ぶのが大切です。LTEモジュールの販売実績が多い大手メーカーであれば、高い製品品質や、きめ細やかなサポート対応を期待できます。
また、メーカー側で相互接続の確認をしている製品かどうかも併せて確認しましょう。相互接続とはLTEモジュールと利用するネットワークとの相互接続性、つまり相性のことを指します。LTEモジュールとネットワークの相性が悪ければ、正常に作動しない、通信品質が悪化するなどの問題が発生します。
例えば、ドコモによるLTE回線であればドコモの提供するネットワークと、ドコモのバンドに対応したLTEモジュールの相互接続を確認できている製品を購入すれば、トラブルを回避しやすくなります。
このように、LTEモジュールはメーカーの実績や相互接続テストについて確認した上で選ぶと安心して利用できます。
大手メーカーのLTEモジュール4選

LTEモジュールは豊富な種類があり、前述したように信頼できるメーカーから選ぶことも大切です。そこで、実績のある大手メーカーからLTEモジュールを4つピックアップして紹介します。
メーカー名 | セイコーソリューションズ株式会社 | 株式会社IDY | 太陽誘電株式会社 | ディジ インターナショナル株式会社 |
---|---|---|---|---|
型番 | MM-M500 | iS105B-002 | WSCL3ADAH2Z413 | XB3-C-GM2-UT-001 |
通信規格 | LTE | LTE Cat. M1 | LTE Cat.M1 | LTE Cat. M1、LTE Cat.NB1 |
通信速度 | 下り:最大150Mbps、 上り:最大50Mbps |
下り:最大300kbps、 上り:最大375kbps |
下り:最大300kbps、 上り:最大375kbps |
下り最大588kbps、上り最大1Mbps(LTE Cat. M1) 下り最大120kbps、上り最大160kbps(LTE Cat.NB1) ※キャリア局側条件に依存します |
対応バンド | B1、B3、B18、B19 | B1、B3、B8、B18、B19、B26 | B1、B19 | LTE: B1, B2, B3, B4, B5, B8, B12, B13, B18, B19, B20, B25, B26, B27, B28, B66, B71, B85 |
対応キャリア | NTTドコモ、KDDI | NTTドコモ | NTTドコモ | NTTドコモ、KDDI |
動作温度 | -20℃~60℃ | -30℃〜75℃ | -40℃~85℃ | -40℃~85℃ |
認証 | TELEC | TELEC、JATE | TELEC、JATE | 申請中 |
セイコーソリューションズ株式会社「MM-M500」
MM-M500は高速かつ大容量の通信に向いた国産LTEモジュールです。SIMフリーのため国内のキャリアすべてに対応し、MVNO各社が提供するSIMサービスも利用できます。用途によって特定のキャリアを使用したい場合や、利用途中でキャリアやMVNO会社を乗り換える場合にも便利です。
プラチナバンドや音声通話VoLTEにも対応しているため、通常のデータ送受信に加え音声でのやりとりを含むIoT製品でも快適に使用できます。
また、本体のみでGPSやGLONASSによる位置情報の取得を行えるのも特徴です。映像の監視や位置情報測位が必要な場面にも対応できるLTEモジュールです。
開発や生産、サポートまで一貫して国内で提供しているため、トラブル時も高いサポートを期待できます。
メーカー名 | セイコーソリューションズ株式会社 |
---|---|
型番 | MM-M500 |
通信規格 | LTE |
速度 | 下り:最大150Mbps、上り:最大50Mbps |
対応バンド | B1、B3、B18、B19 |
対応キャリア | NTTドコモ、KDDI |
動作温度 | -20℃~60℃ |
認証 | TELEC |
メーカーホームページ | https://www.seiko-sol.co.jp/ |
株式会社IDY「iS105B-002」
iS105B-002はLTEモジュールのなかでも小型かつ軽量なのが魅力です。縦36.5mm×横35.7mmの省スペース型でわずか8gしかないため、LTEモジュールの組み込みスペースが限られる製品にも使用できます。
また、省電力性にも優れています。低消費電力が魅力のLTE-M通信に対応しており、小型でありながら長時間の運用が見込まれる製品や、バッテリー駆動の製品に役立つでしょう。例えばスマートメーターやテレマティクスのようなM2M機器、IoT機器に向いています。
また、評価ボードも別途用意されているため、試作品の調整やテストもスムーズに行えます。LWM2Mプロトコルに対応しているため、IoT機器の管理や遠隔監視、ファームアップデートなども容易です。
メーカー名 | 株式会社IDY |
---|---|
型番 | iS105B-002 |
通信規格 | LTE Cat. M1 |
速度 | 下り:最大300kbps、上り:最大375kbps |
対応バンド | B1、B3、B8、B18、B19、B26 |
対応キャリア | NTTドコモ |
動作温度 | -30℃〜75℃ |
認証 | TELEC、JATE |
メーカーホームページ | https://idy-design.com/ |
太陽誘電株式会社「WSCL3ADAH2Z413」
WSCL3ADAH2Z413は、全国規模のガススマートメーターに採用実績のあるモデルをベースとした高品質なLTEモジュールです。
高密度設計により、15mm×14mmの形状でわずか0.92gの小型・軽量化を実現しており、インフラ市場をはじめとした、あらゆるIoT機器に導入しやすくなっています。ガス、水道等のインフラ市場でご使用頂いている実績から、サポート面においても、経験した通信課題の事例を活かした技術サポートが期待できます。
電池駆動のスマートメーター等で設定されているeDRX、PSMモードに対応しており、実網におけるノウハウを活かしながら低消費電力を実現しています。電池駆動で動作させるようなアプリケーションに、最適なモジュールとなります。
機器の運用管理上で、実際にLwM2Mを活用した運用実績もあり、FOTA/SOTA等のLwM2Mサービスにつきましても、スムーズにご安心してお使いいただけます。
メーカー名 | 太陽誘電株式会社 |
---|---|
型番 | WSCL3ADAH2Z413 |
通信規格 | LTE Cat. M1 |
速度 | 下り:最大300kbps、上り:最大375kbps |
対応バンド | B1、B19 |
対応キャリア | NTTドコモ |
動作温度 | -40℃~85℃ |
認証 | TELEC、JATE |
メーカーホームページ | https://www.yuden.co.jp/jp/solutions/lpwa/ |
ディジ インターナショナル株式会社「Digi XBee 3 Global LTE-M/NB-IoT」
Digi XBee 3 Global LTEモジュールは、ワイヤレスモジュール、アダプタ、ツール、ソフトウェアからなるDigi XBeeエコシステムの主要製品で、製品やアプリケーション開発、設置、管理を加速できるよう設計されています。
必要に応じて複数の周波数とワイヤレスプロトコルを切り替えることが可能です。
また、低データ通信量(通常、月間5MB以下で遅延が重要でない場合)、低電力、低コストが要求されるアプリケーションに最適で、スリープ時間とバッテリー寿命を延長するパワーセーブモードを備えています。
さらには、Digi Remote Manager® の使用により、Digi XBee 3 Global
LTEモジュールをクラウド上の中央プラットフォームから簡単に設定・制御できます。モジュールに内蔵されているDigi TrustFence®
セキュリティ、ID、データプライバシー機能は、複数レイヤの機能を使用して、日々変化するサイバー脅威から保護します。
標準の Digi XBee API フレームと AT コマンド、MicroPython と Digi XBee
Studioにより、セットアップ、コンフィグレーション、テスト、機能の追加・変更を簡素化することが可能です。
メーカー名 | ディジ インターナショナル株式会社 |
---|---|
型番 | XB3-C-GM2-UT-001 |
通信規格 | LTE Cat. M1、LTE Cat.NB1 |
速度 | 下り最大588kbps、上り最大1Mbps(LTE Cat. M1) 下り最大120kbps、上り最大160kbps(LTE Cat.NB1) ※キャリア局側条件に依存します |
対応バンド | LTE: B1, B2, B3, B4, B5, B8, B12, B13, B18, B19, B20, B25, B26, B27, B28, B66, B71, B85 |
対応キャリア | NTTドコモ、KDDI |
動作温度 | -40℃~85℃ |
認証 | 申請中 |
メーカーホームページ | https://www.digi-intl.co.jp/ |
LTEモジュールを活用してスムーズにIoT機器の通信環境を構築しよう

LTEモジュールは、IoT向けの機器などに組み込んでLTE通信を行うための部品です。小型で消費電力が小さい傾向にあるため、小さな機器やバッテリー駆動の機器などにも導入しやすくなっています。
LTEモジュールを活用すれば全国規模で使用される機器に導入も可能です。ビルの多い都市部や、起伏が激しい山間部など障害物が多いエリアでもつながりやすく、LTEはIoT機器には向いていると言えます。
LTEモジュールを選ぶ際は、対応バンドとメーカーの実績を確認しましょう。純粋なスペックだけに着目せず、メーカーが提供するサポート内容までチェックしてから購入するとトラブルを回避しやすくなります。
国内メーカーによるLTEモジュールは技術基準適合認定をはじめ国内向けの認証を済ませていることが多く、上手に活用すれば手続きを省略してスムーズにIoT機器を導入できます。自社でIoT機器による無線環境を構築する際はぜひ検討してみてください。
IoT機器の試作段階で検証用に用いるSIMなど、IoTの通信に関してお困りのことがあれば、ぜひMEEQへお問い合わせください。
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※こちらの記事は2024年4月5日時点の情報を記載しております。各種の最新情報・詳細情報につきましては専門機関や各メーカーにご確認ください。

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