コラム

温度センサーとは?種類と温度センサーを取り扱う大手メーカー、IoT化するメリットを紹介

2024.04.19

IoT

温度センサーを導入するにあたって、対象物や温度の測定方法に適したものを選ぶことが重要です。そのためにも温度センサーの種類を把握しておく必要があります。

また、温度測定の効率化や温度データの利活用を目指しているのであれば、温度センサーのIoT化も併せて検討してみましょう。温度センサーに通信機能をもたせると遠隔で温度管理ができ、データを自動的に集計できます。

本記事では、温度センサーの種類別の仕組みや導入する際の選び方、温度センサーをIoT化するメリットを紹介します。後半では、温度センサーのメーカー例と取扱商品も掲載しているので、導入を検討している企業の担当者はぜひ参考にしてください。

温度センサーとは

温度センサーの写真

温度センサーとは、室温や水温、対象物などの温度を電気信号に変換して出力するセンサーです。

温度センサーは、環境や機器の温度を正確に感知し、数値化することができます。金属の伸縮や電気抵抗の変化などの原理を用いて温度を計測し、そのデータを基に快適な環境を維持したり、安全性を確保したりすることが可能です。

日常生活でも冷蔵庫やエアコン、ガスコンロなどに使用されており、さまざまな場面で活躍しています。

温度センサーの種類

温度センサーの種類

「温度センサー」と一口で言っても、推奨される用途によって千差万別です。

温度センサーには用途ごとに最適な技術が採用されており、様々な仕組みのものが存在します。仕組みごとに分類するならば、図のようになります。ここでは、温度センサーとは、という大きな括りの定義から一歩踏み込んで、仕組み別に温度センサーについてご紹介します。

温度センサーは、まず対象と触れることで温度を測定する「接触型」と、対象から発せられる赤外線から温度を測定する「非接触型」に分類できます。

接触型は、「測温抵抗体(RTD)」「サーミスタ」「熱電対」「IC温度センサー」「膨張式/圧力式」「バイメタル」の6つにさらに分類され、非接触型は「赤外線」等が該当します。

測温抵抗体(RTD)

測温抵抗体(RTD)

RTDとも呼ばれる測温抵抗体は、外部電子装置を使用して低レベルの電流をセンサーに流して電圧を発生させることにより、センサーの抵抗を測定します。センサーの温度が上昇すると抵抗値が大きくなる仕組みになっています。

測温抵抗体の特徴は高精度に温度を測定できることです。また、極低温にも対応していることから、寒冷地での屋外の温度測定にも使用されています。

サーミスタ

サーミスタ

サーミスタは、温度の変化によって電気抵抗を測定し、対象の温度を割り出します。温度が高くなれば電気が流れやすくなり、逆に温度が低くなると電気が流れにくくなるというように、サーミスタの電気の流れを見れば温度を知ることができます。

サーミスタは小型で衝撃や振動に強く、温度に対する感度が高いため、私たちの身の回りの家電や精密機器に多く用いられています。

熱電対

熱電対

熱電対は、異なる金属を2つ接合したときに発生する温度差と電位差によって温度を測ります。接合部分で温度変化があると、温度差に比例して電位差(電圧)が発生します。そのため、電位差を測定することで温度を計測できます。

また、熱電対は他の種類に比べ広い温度範囲で測定ができます。例えば、多く用いられるK熱電対は0〜1200度までの測定が可能です。また比較的安価で応答が早く、産業や工業、医療、軍事などで幅広く活用されています。

IC温度センサー

IC温度センサー

集積回路温度センサーとも呼ばれるIC温度センサーは、トランジスタやダイオードの温度特性を利用したものです。

IC温度センサーは、出力方式の観点によりアナログ出力とデジタル出力に分けられます。
小型であるため、回路基板上での温度の監視・制御などによく用いられます。

膨張式/圧力式

膨張式/圧力式

膨張式/圧力式の温度センサーは、温度変化で膨張や収縮する気体や液体を利用したセンサーです。水銀や灯油などの液体を細いガラス管に封入し、温度変化による水位の変化を読み取って温度を測定する液体封入ガラス温度計がその一例です。

例えば水銀温度計は、他の種類に比べ計測できる温度域は狭いものの、精度が高いため、公的機関の気象観測用寒暖計などに用いられています。

バイメタル

バイメタル

サーモスタットとも呼ばれるバイメタルは、熱膨張率が異なる2種類の金属を貼り合わせ、温度変化による板の曲がり具合を測定して温度に変換するセンサーです。

バイメタルは構造が単純で故障が少ないことから、工業用温度計として多く用いられています。

赤外線

赤外線

放射温度センサーとも呼ばれる赤外線は、測定対象から放出される赤外線をレンズなどで集約し、検出素子を温めます。検出素子の温度変化から、測定対象の温度を測ります。

赤外線は非接触で温度を瞬時に測定できるので衛生的で、水滴や粉塵のある環境でも使用されています。

温度センサーをIoT化するメリット

IoTとは「Internet of Things」の略称で、複数のデバイスがインターネットを通じて相互に通信し、情報を共有・収集する技術を指します。温度センサーのIoT化とは、温度センサーに通信機能をもたせることで、温度のデータ収集を遠隔で行えるようにすることです。

温度センサーをIoT化することで、全体的な利便性が向上し、管理体制を強化できます。具体的なメリットはリアルタイムで遠隔監視ができ、温度管理の精度が上がることが挙げられます。

各メリットを解説していきます。

リアルタイムで遠隔監視ができる

IoT化していない温度センサーであれば、センサーがある場所で直接測定結果を確認する必要があります。しかし、温度センサーをIoT化することで、その場にいなくても温度を遠隔で確認できます。

さらに検知したデータを蓄積しておけば、時間や季節による温度の推移も確認できるなど、より緻密なデータ監視が実現します。

温度管理の精度が上がる

目視で温度センサーの読み取りや手書きで記録作業を行って温度管理をすると、確認ミスや計算ミスが発生する可能性があります。

その点、温度センサーをIoT化すれば、正確な温度を自動的に記録・集計できるため、人的ミスの発生を抑止できます。これによって、温度管理の精度が向上し、工場や病院などの安全衛生管理体制が強化されます。

温度センサーの選び方

温度センサーの選び方

ここからはより高い精度で測定するために、温度センサーの選び方を解説します。

耐用温度域

耐用温度域とは、温度センサーが使用に耐えられる温度範囲のことを指します。温度センサーを選ぶ際には、まず何度から何度までの計測温度で使用したいのかを検討しましょう。

例えば、化学プラントや製造工場などで高温部を計測する場合と、冷凍庫や冷却装置などの低温部を計測する場合では耐用温度域が異なるからです。

適正かつ正確に対象物の温度を計測し、利用目的に適した耐用温度域をもつ温度センサーを選ぶことが重要です。

応答速度

温度センサーの感温部の大きさによって、温度に対する応答性は異なります。また、応答速度は配線やセンサー素子の質量で決まります。センサー素子の質量が小さければ小さいほど応答速度は速くなりますが、機械的強度は低下します。

しかし、実際の使用環境では温度センサーの形状や測定対象物の物性、流速、挿入長などによって応答速度が変化することを念頭に置いておきましょう。

IoT対応の可否

リアルタイムで遠隔監視をしたい場合にはIoTと組み合わせられる温度センサーを選びましょう。そのために温度センサーがIoTに対応しているかどうか確認してください。

通信規格

IoTに対応している温度センサーは、通信を行うことが可能です。通信には様々な規格があり、通信距離や通信速度が異なります。温度センサーで利用されている主な通信規格は次の7つです。

  • LTE
  • LTE-M
  • Wi-Fi
  • Wi-SUN
  • Bluetooth
  • LoRa
  • EnOcean

また、データをクラウド上にアップロードするためにはゲートウェイ(ネットワーク機器)を経由する場合もあります。

通信距離

通信規格 通信距離の目安
LTE 〜10km
LTE-M ~10km
Wi-Fi ~100m
Wi-SUN ~1km
Bluetooth ~100m
LoRa ~20km
EnOcean ~200m

上はそれぞれの通信距離の目安です。通信距離の範囲内であっても障害物や他の電波による干渉があると通信距離に影響が生じます。そのため、事前に遮へい物がないか周囲を確認しておくと良いでしょう。

通信速度

通信規格 通信速度の目安
LTE 下り最大:1.7Gbps
上り最大:131.3Mbps*1
LTE-M 下り最大:300kbps
上り最大:375kbps*2
Wi-Fi 最大:9.6Gbps (Wi-Fi 6)
Wi-SUN 最大:400kbps
Bluetooth 最大:3Mbps
LoRa 最大:250Kbps
EnOcean 最大:125kbps

*1 LTEの通信速度についてはこちらを参照しております。
https://www.docomo.ne.jp/area/premium_4g/

*2 LTE-Mの通信速度についてはこちらを参照しております。
https://www.ntt.com/business/lp/iot/lpwa/spec.html

上はそれぞれの通信速度の目安です。データアップロードの頻度とデータサイズによって、最適な通信速度が変わってくるため、それに応じた通信規格がセンサーごとに採用されています。

データアップロード間隔

また、IoT対応の温度センサーで測定を行う際には、収集した測定データをネットワークにアップロードする頻度も重要になってきます。

データアップロード間隔を短くすればするほど、よりきめ細かくデータを取得できるようになります。

また、データアップロード間隔と必要になるデータ容量は比例します。センサー用途に適した定額制の低速プランを利用すると通信コストの削減につながります。 MEEQの定額 低速プランについては下記をご覧ください。

MEEQの料金

温度センサーのメーカー例と取扱商品

実際に温度センサーを選ぶ際の参考になるよう、温度センサーのメーカーと取扱商品を紹介します。製品例として挙げているものはどれもIoT化が可能なものやIoT温度センサーです。

メーカー名 ピクスー株式会社 DIC株式会社 株式会社ティアンドデイ IoT mobile株式会社 株式会社アイエスエイ ワッティー株式会社
製品例 赤外線放射温度センサー やわらか無線センサー ハッテトッテ® おんどとり TR71A 温度っち WD100-FA02+WD100-S32 温度センサ送信機(型式:HYHQ-FF)
+温度センサ(PT-1000A-603/Pt-1000B-500シリーズ)
通信規格 Bluetooth LoRaWAN、Bluetooth Wi-Fi、Bluetooth Wi-SUN(センサー本体)
LTE-M(ゲートウェイ)
プライベートLoRa/LTE EnOcean
耐用温度域 0~50℃ -20℃~55℃ -10℃~60℃ -40℃〜50℃ -50℃~1768℃(計測ユニット※熱電対Rの場合)
-10℃~55℃(通信制御サーバ)
-40℃~60℃(Pt-1000A-603使用時)

ピクスー株式会社

ピクスー株式会社は、2016年3月設立で、Sensor as a Service Webiot(ウェビオ)を開発・運営しています。また、小さく試せるIoTコンサル・開発サービス Lean IoT(リーンIoT)を提供しています。

製品の一つである赤外線放射温度センサーの通信方式はBluetoothです。測定方式は非接触式で、人や動物の検知、各種設備の温度監視に利用できます。

メーカー名 ピクスー株式会社
製品例 温度・湿度・気圧センサー/赤外線放射温度センサー
通信規格 Bluetooth
耐用温度域 0℃〜50℃
ホームページ https://webiot.io/

DIC株式会社

DIC株式会社は、1937年3月に設立され、印刷インキ、有機顔料、合成樹脂などの製造、販売を事業内容としています。グループ会社は2022年末時点で国内30社、海外160社あるグローバルな化学メーカーです。

製品の一つである、やわらか無線センサー ハッテトッテ®の通信方式は、LoRaWAN、Bluetoothです。測定方式は非接触式で、温度、湿度の他にCO2や照度も測れます。また、やわらかく貼って剥がすことが容易で、簡単に設置できるのも特徴です。

メーカー名 DIC株式会社
製品例 やわらか無線センサー ハッテトッテ®
通信規格 LoRaWAN、Bluetooth
耐用温度域 -20℃~55℃
ホームページ https://www.dic-global.com/ja/products/hattetotte/index.html

株式会社ティアンドデイ

株式会社ティアンドデイは1986年に設立され、業務用データロガーやワイヤレス温度・湿度ロガーなどの製造・販売を事業内容としています。農業や施設で使われる自動水やりができるタイマーバルブ、小規模な農業施設などで使用される蛇口に接続するタイプの自動水やり機なども製造・販売しています。

製品の一つであるおんどとり TR71Aの通信方式はWi-Fi、Bluetoothです。無料の専用アプリからデータ管理が簡単に行えます。温度は-40~110度まで測れ、本体の動作温度は-10~60度です。

メーカー名 株式会社ティアンドデイ
製品例 おんどとり TR71A
通信規格 Wi-Fi、Bluetooth
耐用温度域 -10℃~60℃
ホームページ https://www.tandd.co.jp/

IoT mobile株式会社

IoT mobile株式会社は2017年に設立され、IoTソリューション事業やIoTシステム事業などを事業内容としています。現在6種類のデバイスを展開しており、各デバイスにはGPS機能や加速度センサーが搭載されています。

製品の一つである温度っちの通信方式はWi-SUNです。測定方式は非接触式で、あらゆる冷蔵庫、冷凍庫、保冷車を月額350円の定額制で24時間365日正確に記録・監視・管理を行ってくれるクラウド型のIoTソリューションです。

また、ゲートウェイを経由してデータをクラウド上にアップロードできるので、計測した温度データをPCやスマホ、タブレットなどで24時間いつでも閲覧できます。

メーカー名 IoT mobile株式会社
製品例 温度っち
通信規格 Wi-SUN(センサー本体)
LTE-M(ゲートウェイ)
耐用温度域 -40℃〜50℃
ホームページ https://www.ondotchi.com/

株式会社アイエスエイ

株式会社アイエスエイは、ネットワーク警告灯、LoRa対応IoTセンサーによる計測システム、IT機器の自動運転システム、UPS、PDU等の電源関連装置、遠隔監視装置等の各製品の開発/製造/販売(インテグレーション含む)/保守を行っています。

熱電対温度計測ユニットの「WD100-FA02」とデータ収集管理制御通信サーバ「WD100-S32」を組み合わせた、低電力で広範囲エリアのデータ収集が可能な、プライベートLoRa無線方式を用いたIoTシステムです。
計測ユニットからサーバへのデータ送信は、見通しで 良好で約11km、密集地区で 約3kmの遠距離通信が可能です。収集したデータは、閾値により警報や通知も可能です。また、LTEまたはLAN経由で上位システムに送信できます。
温度計測ユニットは長寿命バッテリ内蔵で外部電源は不要の為、設置作業も簡単です。

メーカー名 株式会社アイエスエイ
製品例 WD100-FA02+WD100-S32
通信規格 プライベートLoRa/LTE
耐用温度域 -50℃~1768℃(計測ユニット※熱電対Rの場合)
-10℃~55℃(通信制御サーバ)
ホームページ https://isa-j.co.jp/

ワッティー株式会社

ワッティー株式会社センサ事業部では、EnOcean通信を中心とした環境モニタリングセンサを開発、製造しています。

温度センサ送信機(型式:HYHQ-FF)と温度センサ(PT-1000A/Bシリーズ)を組み合わせることで、低消費電力で遠隔での温度管理が実現できます。
センサ部は用途に合わせて2種類から選択いただけます。Pt-1000A-603は金属ブロックの内側の温度などに、Pt-1000B-500シリーズは低温(-40℃まで)冷蔵冷凍庫の温度測定などにお使いいただけます。
本製品はワクチンの保管庫への導入実績もあります。

メーカー名 ワッティー株式会社
製品例 温度センサ送信機(型式:HYHQ-FF)+温度センサ(PT-1000A-603/Pt-1000B-500シリーズ)
通信規格 EnOcean
耐用温度域 -40℃~60℃(Pt-1000A-603使用時)
ホームページ https://watty.co.jp/

IoT温度センサーの活用事例|アアキテクトデエタラボ株式会社

アアキテクトデエタラボ株式会社のIoT温度センサーの活用事例を紹介します。

アアキテクトデエタラボ株式会社では温泉や温浴施設がある旅館・ホテルなどの運営者向けに、ココチーというシステムを提供しています。

別の業務に時間を取られ温泉の温度確認をし損ねることがなくなるので、温度を最適な状態に保て、顧客満足度の上昇につながっています。また、スタッフが温度を測る必要がないため業務効率化が図れ、本来の業務へ集中でき行き届いたサービスにもつながっていきます。

活用事例の詳細については下記をご覧ください。
電波が届きにくい山あいでも確実にIoT機器が通信できるキャリアを選べるMEEQ

温度センサーをIoT化して業務効率化と精度向上を目指そう

温度センサーを選ぶ際には、測定環境の温度域や応答速度などが自社のニーズに適しているかを確認しましょう。

また、温度管理の業務負担を軽減するには温度センサーのIoT化が必須です。 リアルタイムで遠隔監視ができ、データの共有・管理も自動で可能になるので、温度管理の精度も向上します。 さらに、収集したデータを蓄積・分析し、データ活用が可能になると温度管理の改善にもつながります。

温度センサーをIoT化するには、安定した通信だけでなくデータを貯めるためのストレージなど、用意すべきものが多岐に渡ります。
IoT化を推進する際は、IoT向けモバイル回線に加え、IoTに不可欠な通信とストレージ、データ処理AIをご提供できるIoTプラットフォーム『MEEQ』をご利用ください。
MEEQが選ばれる理由

※こちらの記事は2024年4月19日時点の情報を記載しております。各種の最新情報・詳細情報につきましては専門機関や各メーカーにご確認ください。

Facebookでシェア。 Xでシェア。