コラム

MVNEをわかりやすく解説!MVNOとの違いやMVNEの選び方も紹介

2024.07.04

ネットワーク

MVNO事業を成功させるためには、MVNEの選定が非常に重要です。MVNEはMVNO事業を行ううえで必要なノウハウや技術、ネットワーク設備の提供などさまざまなサポートを行います。
本記事では、MVNEの定義や利用するメリット、事業者の選定方法を解説します。MVNO事業を始める企業や検討段階の企業の方は、ぜひお読みください。

MVNEとは

MVNEとは

MVNEとは、独自の通信設備を保有・運用しているMNOと、MNOのネットワークを利用して自社ブランドで通信サービスを提供するMVNOを橋渡しする存在です。
名称が似通っていますが、それぞれが指している事業者は全く異なるので、総務省総合通信基盤局が発行している資料「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」に則って整理します。

MNOとMVNE、MVNOの概要を表にまとめました。

名称 無線局を自ら開設
または運用している
事業内容
MNO
「移動体通信事業者」
移動通信サービスを提供する
MVNE
「仮想移動体サービス提供者」
× MVNOの事業の構築を支援する事業を営んでいる
MVNO
「仮想移動体通信事業者」
× MNOのネットワークを利用して
移動通信サービスを提供する

MNOは「Mobile Network Operator」の略で、「移動体通信事業者」のことです。
「電気通信役務としての移動通信サービスを提供する電気通信事業」を営み、「移動通信サービスに係る無線局を自ら開設(開設された無線局に係る免許人等の地位の承継を含む)又は運用している」事業者と定義されています。

MVNEは「Mobile Virtual Network Enabler」の略で、「仮想移動体サービス提供者」のことです。
「MVNE(Mobile Virtual Network Enabler)とは、MVNOとの契約に基づき当該MVNOの事業の構築を支援する事業を営む者(当該事業に係る無線局を自ら開設・運用している者を除く。)」と定義されています。
通信サービスをエンドユーザーへ提供するMVNOを支援するという点がポイントとなります。
※本記事では「MVNOとの契約に基づき当該MVNOの事業の構築を支援する事業」を「MVNE事業」と呼んでおります。

MVNOは「Mobile Virtual Network Operator」の略で、「仮想移動体通信事業者」のことです。物理的な回線網を自社では持たず、他の通信事業者から借りる、もしくは再販を受けて、自社ブランドで移動体通信サービスを提供します。
「MNOの提供する移動通信サービスを利用して、又はMNOと接続して、移動通信サービスを提供する電気通信事業者であって、当該移動通信サービスに係る無線局を自ら開設しておらず、かつ、運用をしていない者」と定義されています。
※本記事では「他の通信事業者から借りる、もしくは再販を受けて、自社ブランドで移動体通信サービス」を指し、「MVNO事業」と呼んでおります。

MNOとMVNO・MVNEの違いは、無線局の開設・運用をしているかどうかにあります。また、MVNEとMVNOの違いは、エンドユーザーへサービスを提供するのか、MVNOのサービス提供に向けた支援を行うのかです。
MVNEは、MNOとMVNOを結ぶ中間的な業者で、MVNOに対して運営支援を行います。

※参考:MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン

MVNEを利用するメリット

MVNEを利用するメリット

MVNEを利用するメリットは、仲卸的にMNOからMVNOへの仲介をしてもらえるだけではありません。MVNEの知見やアセットを活用したサポートを受けられるのも大きなメリットです。

MNOのネットワークへの接続や、運用など、莫大なコストがかかる部分をMVNEが吸収しているため、サービス開始までのコストやリードタイムを縮めることが可能です。
また、技術的な部分や運用部分をMVNEに委託する事により、初期投資コストを抑えてMVNO事業経営に集中できます。

MNOのネットワークと接続するための設備を導入・運用する必要がない

MNOとネットワーク接続を行うための設備を導入・運用するコストを削減できるのも、MVNEを利用する大きなメリットです。MVNE がプラン通りの通信状況になるようトラフィックの制御を実施するため、技術的な運用コストを下げつつ自由度の高いサービスを提供できます。

また、MVNEの通信設備を利用することができるため、自社で新たな設備の導入を行う必要がなくなり、大幅にサービス開始までのリードタイムを短縮できます。MVNEからノウハウや技術、設備などの支援を受けることにより、迅速な市場参入が可能です。

MNOとの技術面での調整を自社で行う必要がない

MVNEを利用することによって、MNOとの技術面での調整を自社で行う必要が無くなります。ノウハウを持っていない企業が、MVNEを通すことなくMNOと接続するのは困難であるため、MVNEが技術面での調整を代行してくれるのは大きなメリットです。

また、複数のMNOの回線を取り扱う場合を考えると、MNOごとの仕様の違いにも対応する必要が出てくるためより複雑な調整が必要になってしまいます。 例えば、MNOとのシステム連携をする場面を考えると、直接自社でやりとりをする場合はMNOごとの仕様に対応する必要があるなど調整がより複雑になりますが、その複雑な部分をMVNEに吸収してもらうことができます。

モバイルネットワーク技術に精通したエンジニアを抱えていない企業が、MNOとの接続を行う上で必要な技術面での調整を行うのは難易度が高く現実的ではありません。

このようにMVNEを利用すれば、MNOとの技術面の調整を代行してもらえます。また、MVNO事業を始めるために必要なMNOとの顧客管理システム連携も、MVNEが代行します。

MVNEの選び方

MVNEを選ぶ基準

ここからは、MVNEを選ぶ際に、注目すべき点を解説します。MVNO事業を成功させるためには、MVNEの選定が重要です。国内には複数のMVNEがあり、それぞれ提供可能なサービスが異なります。

  • エンドユーザーにより多くのメリットを提供できるか
  • MVNO事業の運用がより円滑になるか

の二つの観点が重要です。

取り扱い可能な回線網はどのMNOのものか

  • NTTドコモ
  • ソフトバンク
  • KDDI
  • 楽天モバイル

2024年6月現在、MNOが提供する回線網は4つです。
エンドユーザーの選択の幅を広げることができるため、複数のMNOの回線網を提供できる状態がより望ましいといえます。 また、提供エリアが限られている場合はその地域での繋がりやすさを軸に回線網を検討するとよいでしょう。

複数のMNOの回線網を取り扱っているMVNEを利用することにより、ユーザーの選択肢拡大につながります。

通話定額プランの設定可否

スマートフォン向けの音声付きサービスを提供したい場合は、通話定額プランの設定可否も確認しましょう。通話定額を設定できれば、エンドユーザーに提供できるプランの幅が広がります。例えば、法人や高齢者など、比較的かけ放題のニーズが高いと思われる層へのアプローチがしやすいプランを作成できます。

eSIM対応の可否

eSIM対応ができると、SIMカード発送のコストや時間を削減できます。eSIMとは、従来のようにスマートフォンやタブレットなどの端末に挿入して使用するSIMカードとは異なり、あらかじめ端末に内蔵されている組み込み式のSIMです。標準SIMや、microSIMよりも小さな形状をしています。

eSIMの特徴は、遠隔で加入者識別情報(プロファイル)を書き込めることです。物理的なSIMカードの発行や郵送などの手続きが不要となるため、申し込みから通信サービスの利用開始までにかかる時間を短縮できます。

5G対応の有無

4G/LTEだけでなく、5G(第5世代移動通信システム)も提供しているか確認しましょう。5Gは、4G/LTEとして提供されてきた高速・大容量通信をさらに進化させた通信方式です。

今後、需要が増えていくと予想される5Gの端末にも対応可能なMVNEを選ぶことで、より多くのユーザー獲得を見込めます。

物流面の支援を受けられるかどうか

物流面での支援を受けられるMVNEを選びましょう。実店舗ではなくWeb上でサービスを展開する場合は、顧客へSIMを届けるための物流システム構築が重要です。MVNOはユーザーに対して、SIMや端末・セットアップマニュアルなどの書類をキッティングして、指定された住所へ発送する必要があります。

キッティングや発送作業を自社で行うのは、莫大な工数がかかり限界があるため、外部へ委託するのが現実的です。

より市場に出るまでのリードタイムを縮めたい場合、物流面の支援を行っているMVNEを選ぶとよいでしょう。MVNEが提供している物流システムを利用することで、サービス開始に関わるコストを削減できます。

システム構築・連携のサポートの有無

MVNOのサービスを円滑に進めるためには、MVNEからの技術面でのサポートが必須のため、どのような支援を受けられるか確認しましょう。

例えば、顧客管理システムはMVNO側が主体となって準備すべきシステムです。しかしながら、ノウハウや技術を持っていないMVNOが、サポートを受けずに準備するのは容易ではありません。システム構築を委託できる業者を紹介する等のサポートを実施しているMVNEも存在します。

MVNEのノウハウに基づいたアドバイスを受けることで、より円滑にサービスの準備を進められます。

*顧客管理システムとは、契約者の情報を管理するためのシステムです。電話番号、SIMのICCID、氏名などの個人情報、料金計算のためのプラン内容、通話・SMSの従量計算用データなどが管理対象となります。

MVNO事業の始め方

MVNO事業を始めるフロー図

MVNO事業を始めるためには、総務省に対しての各届出や、MVNEへの依頼、サービス提供のためのシステム構築などが必要です。本記事では、MVNO事業を開始するためのステップを4つに分けて解説します。

  • 電気通信事業の届出
  • 電気通信番号使用計画の認定
  • MVNEへの依頼
  • 各種システムの構築

電気通信事業の届出

MVNO事業を始める場合、「電気通信事業法施行規則」に基づき、当該事業を営もうとする旨を総務大臣に届出または登録する必要があります。(電気通信事業法施行規則第9条及び第16条第1項、事業法施行規則第4条及び第9条第1項)

電気通信事業者が新たにMVNO事業を開始する場合で、かつ提供する電気通信役務に変更が生じた場合は速やかに総務大臣に報告しなければなりません。(電気通信事業法施行規則第10条第1項)

※参考:電気通信事業法施行規則 | e-Gov法令検索

MVNEへの依頼

各届出や認定を済ませた後、MVNEへ依頼をかけます。MVNO事業を始めるためには、MNOとの調整やSIMの調達、サービス設計などを行う必要がありますが、MVNEはそれらの代行や支援を行います。また、多くのMVNEは技術やノウハウの提供も行っています。

各種システムの構築

MVNO事業にはWebサイト、顧客管理システム、カスタマーサービス、物流システムの構築が必要です。MVNEによってサポートの手厚さは異なるため、受けたいサポートのレベルにあわせた適切なMVNEの選定が重要です。

構築が完了したら、MVNEと共同でテストを実施します。動作に問題ないか、正しく連携できているかなどの点を確認し、問題が発見された場合は都度、修正を行います。必要なテストをすべてクリアしたら、MVNOとしてサービスを開始できます。

電気通信番号使用計画の認定

MVNO事業では、電気通信番号を使用して電気通信役務を提供します。そのため、サービス開始時に電気通信番号使用計画を作成して、総務大臣の認定を受ける必要があります。(電気通信事業法第50条の2第1項及び電気通信番号規則第2章)

※参考:電気通信番号を使用するための手続

MVNOを支援するMVNEを利用してスムーズな業界参入を実現しよう

MVNEは、MVNOに対してシステムの提供やサポートを行う事業者です。MVNEはMNOのネットワークに接続し、回線をまとめて借りて通信制御を行い、〇GBプラン等のサービス設計をして、小分けにしてMVNOにサービスを提供します。

MVNOはMVNEの支援を受けることでコスト削減や迅速な市場参入を実現し、技術的な運用をMVNEに委託することで事業の経営に集中できます。通信品質や対応エリアを確認した上で、最適なMVNEを選定しましょう。

各種モジュールについては、次の記事でそれぞれ詳しく解説しています。より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

MVNOの立ち上げについてお困りのことがあれば、ぜひ弊社までご相談ください。

  • ・ミーク株式会社 MVNO支援事業(MVNE事業)のご紹介資料はこちら
  • ・お問い合わせはこちらのフォームにて受け付けております。

※こちらの記事は2024年7月4日時点の情報を記載しております。各種の最新情報・詳細情報につきましては各専門機関にご確認ください。

Facebookでシェア。 Xでシェア。