コラム

通信モジュールとは?SIMとの違いや設置方法、大手メーカー6社を紹介

2024.05.31

ネットワーク

DXの一環として自社製品をIoT化する上で、効率的な開発やコントロールを考えているのなら通信モジュールの採用を検討するとよいでしょう。通信モジュールがあれば、通信機能を製品にもたせるための工数をおさえることができます。

しかし、いざ通信モジュールを導入しようと思っても、「どのような基準で選べば良い?」「どこのメーカーで取り扱っているのか?」と疑問を感じている方も多いでしょう。

そこでこの記事では、無線の通信規格に対応した通信モジュールについて解説します。さらに、通信モジュールと混同されがちなSIMとの違いもご説明いたします。選び方のポイントや通信モジュールを使用するメリット、取り扱っているメーカーの例も紹介するので、通信モジュールを選択する際の参考にしてください。

通信モジュールとは?

通信モジュールを導入するにあたり、通信モジュールがどのような部品か理解することが重要です。

ここでは、通信モジュールの特徴や仕組み、用途をそれぞれ紹介します。

通信モジュールとは

通信モジュールとは、組み込まれた機器に通信機能を付ける小型の通信端末のことを指します。
拡張性が高く、各種デバイスに組み込むことで様々なIoT機器を開発することができます。

通信モジュールの仕組み

通信モジュールは、チップセットやインターフェース、メモリ、電源、制御プロセッサなどで構成されています。基板に組み込んで使用しますが、通信モジュールだけではデータのやり取りができないため、別途アンテナを取り付けるのが一般的です。これらの要素が協調して動作することで、無線通信が可能になります。

最近では、通信モジュールにアンテナを組み込んだ製品も販売されています。別途アンテナを用意する必要がなくなるため、より簡単に導入できます。

また基板に実装可能な超小型チップアンテナも販売されており、小型機器に通信機能を持たせたい場合にも対応できます。

通信モジュールの用途

通信モジュールは、小型なためさまざまな機械に搭載できます。例えば、下記のような機器に搭載されています。

  • 車載機器
  • 産業用の装置
  • スマートウォッチ
  • スマート家電 など

車載機器に通信モジュールを搭載すれば、リアルタイムでの車両の運行管理などが実現できるでしょう。また産業用の装置に搭載すれば、装置を遠隔操作することなども可能になります。

通信モジュールを使用するメリット

>通信モジュールを使用するメリット

通信モジュールを使用するメリットは主に2つです。

  • 無線対応のIoT機器を少ない工数で作れる
  • 認定作業が不要になる

それぞれ詳しく紹介していきます。

無線対応のIoT機器を少ない工数で作れる

通信モジュールのメーカーがソフトウェアを提供している場合、回路調整やソフトウェア設計をせずに無線対応のIoT機器を作れます。

無線回路は、基板や周辺回路との相性を確認しながら調整しなければ正常に動作しません。調整には専門的な知識や技術が必要なため、経験がない場合は難しいものです。

その点、ソフトウェアも併せて提供されている通信モジュールを組み込めば、無線回路に関する専門知識を持たない場合でも調整に必要なプロセスを省くことができ、作業時間の大幅な削減につながります。

認定作業が不要になる

通信モジュールを組み込むことで、機器を設計する際に標準規格の遵守や、各種の認証取得の簡略化が可能です。

標準規格とは、周波数の有効利用及び他の利用者との混信の回避を図る目的から定められる国の技術基準と、併せて無線設備や放送設備の適正品質、互換性の確保等、無線機器製造者、利用者等の利便を図る目的から策定される民間の任意基準を取りまとめて策定される、民間の規格です。例えば、通信規格のWi-FiのIEEE 802.11も、この標準規格で定められています。
電波を利用する機器は、製品に技術的な不備があると通信ができなくなります。そのため標準規格が定められ、技術的に問題がないという証明書の取得が求められるのです。

また、法律に基づいて取得すべき証明として、技術基準適合証明、工事設計認証、技術基準適合認定、設計認証というものがあります。
技術基準適合証明と工事設計認証は電波法に基づく認証です。
機器1台ずつに対し取得する認証が技術基準適合証明、量産を行う製品の設計図に関して取得する認証が工事設計認証という違いがあります。
さらには、電話回線(固定電話回線だけでなくLTEのデータ回線など携帯電話用の回線も含む)を用いる通信規格のモジュールを生産する場合は、電気通信事業法に基づき技術基準適合認定または設計認証を取得する必要もあります。
こちらも電波法同様、機器1台ずつに対し取得する認証が技術基準適合認定、量産を行う製品の設計図に関して取得する認証が設計認証という違いがあります。

標準規格や各種認証をクリアしているモジュールを組み込むことで、自社で認定作業を行う工数を省くことが可能です。

しかし海外製品など、認定を受けなければ違法となる製品もあるため注意しましょう。

通信モジュールの選び方

通信モジュールの選び方

通信モジュールは選び方を誤ると本来の性能を発揮できないことがあります。選ぶ際は、次の3つのポイントをチェックしましょう。

  • 通信規格
  • 動作温度
  • サイズ

通信規格

通信モジュールは、使用する通信規格にあわせて製品を選びましょう。ここでは、通信距離、通信速度の2つのポイントから紹介していきます。

通信距離

今回ご紹介する製品が対応している通信規格と、それぞれのおおよその通信距離は次のとおりです。

通信規格 おおよその通信距離
5G 〜10km*1
LTE(4G) 〜10km
Wi-Fi 〜100m
Bluetooth 〜100m*2
UWB 〜10m
LoRa 〜10km

*1 ミリ周波数帯、sub6を利用する場合はこの限りではありません。

*2 利用する端末のBluetoothのバージョンや電波強度(クラス)、出力や受信側の感度に依存します。

LTE(4G)やWi-Fiなど、モバイル機器に使用されるケースが多い通信規格は、どの規格も最長100m以上の通信距離があります。

またBluetoothは、端末同士を数珠つなぎに接続したマルチホップ通信を活用すると、さらに通信距離を延ばせます。

通信速度

通信規格それぞれの、おおよその通信速度は次のとおりです。

通信規格 おおよその通信速度
5G (ミリ周波数帯の場合)
下り:最大20Gbps
上り:最大10Gbps

(sub6の場合)
下り:最大1Gbps
上り:最大500Mbps*3
LTE(4G) 下り:最大 1.7Gbps
上り:最大 131.3Mbps*4
Wi-Fi 最大9.6Gbps (Wi-Fi 6)
Bluetooth 最大3Mbps
UWB 最大480Mbps
LoRa 最大250kbps

*3 5Gの通信速度についてはこちらに記載のある要求条件を元に記載しております。
各通信サービスの実効速度につきましては各事業者までお問い合わせください。
https://www.docomo.ne.jp/binary/pdf/corporate/technology/rd/technical_journal/bn/vol25_3/vol25_3_003jp.pdf

*4 LTE(4G)の通信速度についてはこちらを参照しております。
https://www.docomo.ne.jp/area/premium_4g/

Wi-Fiや5G、LTE(4G)は、上記の通信規格のなかでも通信速度が高いのが特徴です。

LPWAやBluetoothは通信速度が比較的低い通信規格ですが、消費電力をおさえながら長距離通信を行えます。

動作温度

通信モジュールを選ぶ際は、使用環境に対応できる動作温度の製品を選ぶことも重要です。

例えば通信モジュールを工場などの高温環境下で正常に動作させ続けるためには、動作温度の上限が高い通信モジュールが必要です。

一方、冷蔵庫や冷凍庫の温度管理など、低温環境で使用する際は動作温度の下限が低くなくてはいけません。特に冷凍庫での使用はマイナス20度近い環境になると考えられるため、マイナス30度程度まで対応している通信モジュールを選びましょう。

サイズ

機器の大きさによっては通信モジュールの搭載が難しいケースもあるため、サイズの確認も重要です。

例えば、腕時計やリストバンドなど、ウェアラブル端末に組み込む場合は、小さなサイズでないと物理的にスペースが確保できないため組み込めません。

通信モジュールを導入したい装置がどの程度の大きさなのか確認し、フットプリント(機器や装置の専有面積)の大きさに注意しながら製品を選びましょう。

通信モジュールの大手メーカー6社と取扱製品

ここからは、具体的に通信モジュールを選ぶ際の参考にできるよう、日本の大手メーカーと取扱製品を紹介していきます。通信モジュールを扱う主なメーカーの製品例をあげたので参考にしてみてください。

メーカー名 セイコーソリューションズ株式会社 株式会社日本ジー・アイ・ティー 株式会社ウィビコム 株式会社フクミ 株式会社クレアリンクテクノロジー サイレックス・テクノロジー株式会社
製品例 SIMフリー LTE通信モジュール
MM-M500/510
変復調機能内蔵
UWB送受信モジュール
GA00491
5G/ローカル5G対応通信モジュール
M.2 5Gモジュール
Bluetooth 5(フルサポート)
ブランクモジュール
MDBT50Q-1M
LoRa通信モジュール
E220-900T22S(JP)
低消費電力無線LANモジュール
SX-SDMAX
主な通信方式 LTE UWB 5G Bluetooth LoRa Wi-Fi 6、Bluetooth® v5.3
動作温度 -20℃~60℃ -20℃~60℃(但し結露なきこと) 非公開につき、別途お問い合わせ下さい 非公開 -45℃〜85℃ 温度条件:-40℃~85℃
湿度条件:15~95%RH (結露なきこと)
サイズ 30 × 42 × 2.7mm 31 × 49× 4mm 30mm x 52mm x 2.2mm 15.5 x 10.5 x 2.2mm 16 × 26 × 3mm 17.0 × 18.0 × 2.65mm
適合済み認証 技術基準適合証明 技術基準適合証明 電波法認証 技術基準適合証明 工事設計認証 電波法認証(日・米・加・欧・英)

セイコーソリューションズ株式会社

セイコーソリューションズ株式会社は、セイコーグループの事業会社です。ハードウェアやソフトウェア、情報システム機器の開発、販売などを行っています。

代表的な製品にはSIMフリー LTE通信モジュールのMM-M500やMM-M510などがあり、どちらもSIMサービスが利用できるLTE通信モジュールです。MM-M500は高速・大容量通信向け、MM-M510は低速通信向けで廉価なモデルとなっています。

メーカー名 セイコーソリューションズ株式会社
事業内容 ハードウェア・ソフトウェア、情報システム機器における
自社ブランド製品の開発、販売ならびにサービス・運用サポート など
製品例 SIMフリー LTE通信モジュール MM-M500/510
主な通信方式 LTE
動作温度 -20℃~60℃
サイズ 30 × 42 × 2.7mm
適合済み認証 技術基準適合証明
メーカーホームページ https://www.seiko-sol.co.jp/

株式会社日本ジー・アイ・ティー

株式会社日本ジー・アイ・ティーは、UWBなど最先端技術の開発や販売などを行うメーカーです。要望にあわせて企画や提案から行い、フルターンキー・サービスで製品を提供しています。

代表的な製品には、UWB通信ができる変復調機能内蔵UWB送受信モジュール GA00491があります。GA00491はUWB測位システムやデータ通信システム開発者向けの製品で、TOA/TWR方式のリアルタイム位置情報システム(RTLS)やUWBレーダーを簡単に作ることが可能です。

メーカー名 株式会社日本ジー・アイ・ティー
事業内容 UWBをはじめとする最先端技術の開発・設計・製造・販売 など
製品例 変復調機能内蔵UWB送受信モジュール GA00491
主な通信方式 UWB
動作温度 -20℃~60℃(但し結露なきこと)
サイズ 31 × 49× 4mm
適合済み認証 技術基準適合証明
メーカーホームページ https://git-inc.com/

株式会社ウィビコム

株式会社ウィビコムは、ローカル5G環境の構築に必要な機器を提供しているメーカーです。ワイヤレスに特化し、モジュールの開発や供給などを行っています。

代表的な製品は、5G/ローカル5G対応通信モジュール M.2 5Gモジュールです。M.2規格のコネクタと接続し、簡単に5G通信環境を構築できます。

メーカー名 株式会社ウィビコム
事業内容 ワイヤレスに特化した組込み用途アナログ・デジタル基板の開発及び量産、
ワイヤレスモジュールの開発と供給 など
製品例 5G/ローカル5G対応通信モジュール M.2 5Gモジュール
主な通信方式 5G
動作温度 非公開につき、別途お問い合わせ下さい
サイズ 30mm x 52mm x 2.2mm
適合済み認証 電波法認証
メーカーホームページ https://local5g.wivicom.co.jp/

株式会社フクミ

株式会社フクミは、輸出入を中心にBPOサービスを提供するメーカーです。輸出や輸入などの貿易代行だけでなく、OEM/ODM製品の開発請負なども行っています。

代表的な製品であるBluetooth 5(フルサポート)ブランクモジュール MDBT50Q-1Mは国を跨いで幅広く認証を取得済みのため、グローバル展開する際のイニシャルコストを削減可能です。

メーカー名 株式会社フクミ
事業内容 輸出や輸入などの貿易業務代行、OEM/ODM製品開発請負 など
製品例 Bluetooth 5(フルサポート)ブランクモジュール MDBT50Q-1M
主な通信方式 Bluetooth
動作温度 非公開
サイズ 15.5 x 10.5 x 2.2mm
適合済み認証 技術基準適合証明
メーカーホームページ https://fukumi.co.jp/

株式会社クレアリンクテクノロジー

株式会社クレアリンクテクノロジーは、高性能通信ソフトウェアやIoTデバイス複合技術などの受託設計、開発を行っているメーカーです。

代表的な製品には、LoRa通信モジュール E220-900T22S(JP)があります。E220-900T22S(JP)はLoRa通信の性能を維持して省電力機能を充実させた製品なので、LPWA通信装置のコスト削減が可能です。

メーカー名 株式会社クレアリンクテクノロジー
事業内容 高性能通信ソフトウェアやIoTデバイス複合技術/機能モジュールなどの
試験研究から受託設計・開発、保守 など
製品例 LoRa通信モジュール E220-900T22S(JP)
主な通信方式 LoRa
動作温度 -45℃〜85℃
サイズ 16 × 26 × 3mm
適合済み認証 工事設計認証
メーカーホームページ https://clealink.jp/

サイレックス・テクノロジー株式会社

サイレックス・テクノロジー社は、ハードウェア・ソフトウェアの技術を核とした日本の研究開発型企業です。安全で信頼性の高いワイヤレス技術と組込みノウハウを用いて「切れない無線空間」という確実な接続性をもつ無線環境を構築する製品とサービスを提供しています。

SX-SDMAXはNXP社のIW611を使用している、SDIOインタフェースタイプ Wi-Fi 6 & BluetoothⓇ対応の無線LANモジュールです。
Wi-Fi 6は最大9.6Gbps(理論値)という高速通信が特長です。
ただ速いだけでなく、通信の安定性、データ通信効率、省電力性においても大幅に改善され、Wi-Fi通信の主流として広がっています。

メーカー名 サイレックス・テクノロジー株式会社
事業内容 ワイヤレス技術をコアとし、機器をネットワークにつなげる
ハードウェア・ソフトウェアを提供
製品例 低消費電力無線LANモジュール SX-SDMAX
主な通信方式 Wi-Fi 6、Bluetooth® v5.3
動作温度 温度条件:-40℃~85℃
湿度条件:15~95%RH (結露なきこと)
サイズ 17.0 × 18.0 × 2.65mm
適合済み認証 電波法認証(日・米・加・欧・英)
メーカーホームページ https://www.silex.jp/

通信モジュールの購入時によくある質問

ここからは、通信モジュールの購入時によくある質問に回答していきます。

通信モジュールの購入方法は?

通信モジュールは、メーカーの製品ページや販売店のサイトから簡単に購入できます。メーカーによっては、通信モジュール導入に向けて見積もりの相談を受けていることもあります。

通信モジュールとSIMの違いは?

通信モジュールは、システムのなかで通信上の基本処理を行う役割を持ち、アンテナが受け取った信号の処理を行います。BluetoothやLTEなど、さまざまな通信方式に対応した製品があります。

一方SIMは、LTE通信や5G通信を行う際に必要な契約者情報が入力された部品を指します。あくまでSIM自体に通信機能はなく、通信モジュールがLTE通信を行う上で必須となる契約者情報が入っているという点が通信モジュールとの違いです。

通信モジュール購入後のサポート体制は?

販売店によっては、取扱説明書や組込ガイドライン、セットアップ情報の提供などを行うケースがあります。またIoTモジュール搭載製品の開発サポートやネットワークに関する提案などのサポートをする販売店もあるので、知識やノウハウがなくても安心して導入可能です。

通信モジュールを導入して社内のDXを促進しよう

通信モジュールを導入すると製品に通信機能を加えることができます。

各種認定作業の手間を減らしたいのであれば、技術基準適合証明を取得している通信モジュールを選びましょう。無線機器には技術基準適合証明の認証が必須となります。

製品の試作段階で検証用に用いるSIMなど、通信に関してお困りのことがあれば、ぜひMEEQへお問い合わせください。
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通信モジュールの中でも、IoTモジュールやLTEモジュールなどに特化して解説している記事もあるので、そちらもぜひお読みください。
IoTモジュールとは?選び方とメーカー・製品例、活用事例を詳しく解説
LTEモジュールとは?使用するメリットや選び方、大手メーカー4社を紹介

※こちらの記事は2024年5月31日時点の情報を記載しております。各種の最新情報・詳細情報につきましては専門機関や各メーカーにご確認ください。

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