コラム

技適とは?IoT化推進を進める際に知っておくべき基礎知識を解説

2024.06.11

IoT

パソコンやスマートフォン、タブレットなどの通信機器に限らず、自動車や家電製品などでもインターネットに接続する機能を持つIoT化が進んでいます。今後は、IoT化推進によって人々の暮らしが便利になることが期待されています。IoT製品の開発時において、注意する必要があるのが技適です。

本記事では、IoT化推進における技適の必要性を解説します。さらに、技適を取得する流れやIoT機器に関する技適以外の審査も紹介します。本記事を読んで、IoT化の推進に欠かせない技適への理解を深めましょう。

技適とは

まずは、よく耳にする専門用語として「技適」と「技適マーク」、「技適番号」について解説します。加えて、日本において取得すべき認証として、「工事設計認証」「設計認証」「TELEC認証」「JATE認証」「VCCI」についても簡単にご紹介します。それぞれの内容を理解して、混同を避けましょう。

技適とは

技適とは「技術基準適合認定」または「技術基準適合証明」の略称です。
通信を行う機器が日本の電気通信事業法(技術基準適合認定)、または電波法(技術基準適合証明)の基準に則ったものであることを証明する認証が技適です。
技適はIoT機器を含む通信機器や、機器に組み込むモジュールなどの筐体そのものに対して、適合性を証明するものです。技適の認証を取ることは、通称「技適取得」と言われています。

技適に含まれる認証

技術基準適合認定は、端末が接続する先の電話回線(固定電話回線だけでなくLTEのデータ回線など携帯電話用の回線も含む)ネットワークのインターフェースに適合しているかどうかを示す認証です。量産品については設計認証(後述)という認証が用意されており、電気通信事業法で定められた基準を満たしていることを示すためにこの2つのどちらかを取得する必要があります。

一方、技術基準適合証明は、無線機から電波が制度で定められた基準通りに発射されるかどうかを機器1台ごとに証明する認証です。量産品に関しては工事設計認証(後述)という認証が用意されており、電波法を遵守していることを示すためにこの2つのどちらかを取得する必要があります。

機器の製造者以外が技適取得するのは難易度が高く、現実的ではありません。IoT機器を製造している企業や製造者にとって、技適は自社製品の技術基準適合を証明するものであり、技適取得がユーザーからの信頼につながるのです。

IoT機器に技適取得が必要な理由

無線通信を行うIoT機器を販売するためには、電波法に基づく技術基準適合証明の取得が必須になります。
また、電話回線(固定電話回線だけでなくLTEのデータ回線など携帯電話用の回線も含む)を利用するIoT機器を販売するためには、電気通信事業法に基づく技術基準適合認定の取得も必要となります。
そもそもなぜ、このような認証を取得する必要があるのでしょうか?
それぞれが準拠している法律の目的に照らし合わせつつ解説します。

電波法は、限られた周波数帯の電波を公平かつ効率的に利用できるようにするために制定された法律です。
通信のために電波を発する機器は、電波法上ではすべて無線局という扱いになり、通信機器を使用するためには無線局の免許を取得する必要があると定められています。
しかしながら、小規模な無線局(IoTセンサー、ルーターなど)のユーザーが全員免許を取得するというようなことは現実的ではないため、例外として、技術基準適合証明を取得している機器であれば免許なしでも取り扱いができると定められているのです。

一方電気通信事業法は、電気通信事業の運営を適正かつ合理的なものにすることで、

  1. 公正な競争を促進する
  2. 電気通信役務の円滑な提供を確保する
  3. 利用者の利益を保護する

を目的として制定された法律です。
1985年の通信自由化に伴い、それまで日本電信電話公社が責任を負っていた通信サービスに様々なメーカーの端末が複数キャリアのネットワークに接続するという状況が生じたことを受け、電気通信事業法に基づいて作られた認証が技術基準適合認定です。

制度の内容や取得の手続きが煩雑で、理解が難しい側面もありますが、IoT機器を開発・販売するうえで避けて通れないものが技適なのです。

技適取得が必要となるIoT機器

送受信装置は小型化やモジュール化、チップ化が進んでいるため、IoT機器に組み込まれる通信モジュールやIoTモジュールが技適を取得するというケースも珍しくありません。

技適はIoT機器自体か、内部の通信モジュールやIoTモジュール自体を対象とした取得が必要です。技適を取得しているモジュールに一切変更を加えることなく製品に組み込む場合は、最終製品にあたるIoT機器自体への技適取得は原則として不要です。

参考ページ:
Q17「認証取得済みのモジュールを組み込む製品は、製品本体として再度認証の取得が必要ですか。」
https://www.telec.or.jp/faq/

技適が必要なモジュールの例としては、BluetoothモジュールやWi-Fiモジュール、LTEモジュール、RFID(電子タグ)モジュールなど無線を利用するものが挙げられます。IoT機器は、組み込まれたモジュールと同じ技適マークと技適番号を筐体に表示しなければなりません。

技適を取得しているモジュールを用いずにIoT機器を製作する場合は、IoT機器の製造者が技適を取得する必要があります。

日本において取得すべき認証

IoT機器を開発するうえで取得すべき認証として、技適のほかに「VCCI」が代表的なものとして挙げられます。
また、「技術基準適合証明」と「技術基準適合認定」に準ずる認証として、量産品の設計を対象とした「工事設計認証」と「設計認証」や、「TELEC認証」と「JATE認証」もあります。技適と混同しないように定義の違いを理解しておきましょう。

* 特定無線設備に関する詳細は、総務省 電波利用ホームページの「特定無線設備、特別特定無線設備一覧」をご覧ください。
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/equ/tech/type/index.htm

「VCCI」は、法律に基づいた規制ではなく、一般財団法人VCCI協会が国際標準であるCISPR規格に基づいて認証を行う自主規制です。
この認証をとることで、機器の発する妨害波が協会の定めた規定値内に収まっていることを証明できます。
通信障害を引き起こす妨害波を規制する制度として日本はCISPR(国際無線障害特別委員会)規格に準じており、VCCIがその認証制度を自主規制として運用しています。

CISPR規格とは、情報通信機器・電子機器の発する妨害波がラジオやテレビなどの受信機に障害を与えてしまうことを受け、CISPR(国際無線障害特別委員会)が妨害波の許容値をとりまとめた基本規格・共通規格のことです。
日本の関係団体がCISPR規格に業界全体で対応するべく、共同で設定した自主規制措置がこの「VCCI」という認証です。

※参考:一般社団法人 VCCI協会
https://www.vcci.jp/general/domain.html

「工事設計認証」は、量産用機器の設計に対しての電波法に基づいた認証で、「設計認証」は同じく量産用機器の設計に対する電気通信事業法に基づく認証です。通信機器の設計図や、製造等の取扱いの段階における品質管理方法が認定の対象となります。
認証後に通信機器が製造されるという点が技術基準適合証明と異なります。

TELECとJATEは、両方とも技術基準適合証明の登録証明機関の通称です。
登録証明機関とは技術基準適合証明の事業を行う者として、総務大臣の登録を受けた国内の機関を指します。
TELECで検査を行った認証を「TELEC認証」、JATEで行った認証を「JATE認証」と呼ぶことがあります。
また、TELECとJATEは技術基準適合認定の認証を行う登録認定機関でもあるため、「TELEC認証」「JATE認証」などと表記されている場合、電波法と電気通信事業法のどちらの法律に基づいている認証なのか確認が必要な場合があります。

技適マークとは

技適マーク

技適マーク

※参考:外国製無線機を使用する場合は技適マークを確認してください
https://www.soumu.go.jp/soutsu/kinki/kankyou/guide/gaikoku.html

技適マークとは、IoT機器が電波法に基づく「技術基準適合証明」「工事設計認証」または電気通信事業法に基づく「技術基準適合認定」に適合していることを証明するマークです。 対応する法律を示すための補助マークとして、TとRがあり、Tは電気通信事業法、Rは電波法に基づく認証を取得していることを表しています。

日本国内では、技適マークがついていない通信機器を使用すると電波法違反になる場合があります。電波法に違反すると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金の対象になります。

技適マークとともに付与される認証番号

認証番号は、技適を取得した際に付与される固有番号です。 電波法と電気通信事業法の二つの認証を取得している場合、TやRの補助マークに続けて表記されます。

技適を取得している機器の筐体に技適マークと認証番号がつけられるケースが一般的ですが、モジュールなど表示が困難または不合理な場合は取扱説明書に記載されることもあります。

技適を取得する流れ

技術基準適合証明を例にとり、技適を取得するステップについて解説していきます。IoT機器の製造者は、技適マークを取得する流れを把握しておきましょう。

なお、後述しますが、技適をすでに取得済みのモジュールを使用する場合は、取得作業を省略できます。

必要書類の用意

まず、申込書や工事設計書などの必要書類を用意します。無線通信を行う製品で技適マークを取得する場合は、アンテナの特性情報が記載された書類も必要です。技術基準適合認定取得に必要な書類は次のとおりです。

  • 技術基準適合証明申込書
  • 工事設計書
  • 無線設備系統図
  • 操作の説明書
  • 部品の配置を示す写真又は図

試験の準備

ハードウェアとソフトウェアの両方で準備を進めます。ハードウェアの準備では、RF入出力をアンテナからコネクタに変更する改造を実施します。技適を取得するまで、アンテナから電波を出力することは許可されていません。

ソフトウェアでは、無線仕様を決め、仕様に沿ってプログラムを作成します。

無線試験の受験

技術基準適合認定は個体への認証なので、証明機関にて無作為に試験サンプルを選定します。周波数ごとに8項目の試験を行います。

  • 周波数の偏差
  • 占有周波数帯幅
  • スプリアス発射または不要発射の強度
  • 空中線電力の偏差
  • 隣接チャネル漏えい電力
  • 副次的に発する電波等の限度
  • 送信時間制限装置
  • キャリアセンス機能

なお、周波数帯域によって、試験にかかる時間は変動する場合もあります。

証明書の受け取りと技適マークの貼付

試験に合格すると、証明書が発行されその場で技適マークが貼り付けられます。

技適マークの取得手続きを省略する方法

自社で通信機器を製造する場合、技適マーク取得済みのモジュールを使用することで、機器の販売開始までの期間を早められます。技適マーク取得済みモジュールを組み込んだ機器は、試験や認証が免除されるからです。

総務省はモジュール単体でも無線通信設備として認証が可能という見解を持っているため、技適マーク取得済みのモジュールが組み込まれた機器は届け出も不要です。技適マークを取得しているモジュールを使用することによって、費用や時間を大幅に節約できます。

IoT製品に対する評価制度の整備

2024年6月現在まだ運用開始前ですが、IoT機器の審査として「IoT製品に対するセキュリティ適合性評価制度」が整備されつつあります。IoT機器のセキュリティ機能を第三者が共通の基準を用いて評価し、その結果に対して認証を付与する制度です。

IoT製品の選定時や調達時に、そのセキュリティ機能や対策状況を自治体・企業などが自組織で確認できているケースが少ないことや、現状のままでは十分なセキュリティ知識のない企業や一般消費者がサイバーセキュリティリスクに晒される危険性があることを受け、制度の整備が進んでいます。

IoT機器の製造者だけでなく、使用者にも関わってくる可能性がある制度であり、今後の動きに注目しておくと良いでしょう。

※参考:IoT製品に対するセキュリティ 適合性評価制度の構築について
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sangyo_cyber/wg_cybersecurity/iot_security/pdf/006_04_00.pdf

技適に関するよくある質問

技適に関してよくある質問と回答を紹介します。技適マークに関連したことで疑問が生じた際には、ぜひ参考にしてください。

外国製のIoT機器にも技適マークは必要?

外国製のIoT機器でも、日本国内で使用するのであれば原則として技適マークが必要です。技適マークが付いていない機器は、日本国内で通信ができないだけでなく、日本の電波規格にそぐわない電波を発するリスクがあります。法律に違反してしまうというだけでなく、他のデバイスに悪影響を与えてしまうおそれもあるため、マークのない機器の使用は避けましょう。

外国製のIoT機器を国内で使用するために購入するのであれば、事前に技適マークの有無を確認しておくと良いでしょう。

※参考:総務省 電波利用ホームページ | 外国製無線機を使用する場合は技適マークを確認してください
https://www.soumu.go.jp/soutsu/kinki/kankyou/guide/gaikoku.html

認可が下りた後に技適の取得を確認する方法は?

総務省が公開している「電波利用法ホームページ」の「技術基準適合証明等を受けた機器の検索」ページで、自社の製品が技適取得したIoT機器として登録されているかを検索できます。

上記のページで「技術基準適合証明番号」「工事設計認証番号」「技術基準適合自己確認の届出番号」のいずれかを入力することにより、検索が可能です。番号だけでなく、氏名や型式、機関名などでも検索できます。

※参考:総務省 電波利用ホームページ | 技術基準適合証明等を受けた機器の検索
https://www.tele.soumu.go.jp/giteki/SearchServlet?pageID=js01

技適マークに関する質問の相談先はある?

技適マークに関する質問や相談は、各地域の総合通信局で受け付けています。総務省の電波利用ホームページ内には、各地域の総合通信局の電話番号や、電波の安全性に関する相談窓口の電話番号が記載されています。

※参考:総務省 電波利用ホームページ|電波環境|電波の安全性に関する相談窓口
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/ele/pr/consultation/index.htm

技適を取得してIoT化を推進しよう

技適とは「技術基準適合証明」または「技術基準適合認定」の略称で、IoT機器などに対しての技術認証として製造者が取得するものです。技適取得は早めに行い、必ず筐体や取扱説明書などに技適マークを表示する必要があります。
技適などの電波法・電気通信事業法に準拠した認証に加え、VCCIなどの国際基準に基づいた認証を取得することが、法の遵守だけでなくユーザーから信頼を得ることにも繋がります。

技適を取得するためには、手続きや試験が必要です。ただし、すでに技適マークのついたモジュールを使用することで、手続きを簡略化できます。

各種モジュールについては、次の記事でそれぞれ詳しく解説しています。より詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

通信モジュールとは?SIMとの違いや設置方法、大手メーカー6社を紹介
IoTモジュールとは?選び方とメーカー・製品例、活用事例を詳しく解説
LTEモジュールとは?使用するメリットや選び方、大手メーカー4社を紹介

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※こちらの記事は2024年6月11日時点の情報を記載しております。各種の最新情報・詳細情報につきましては専門機関や各メーカーにご確認ください。

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